開戦前夜 レビュー|戦争は、なぜ止められなかったのか(☆3.6)

screen

監督・脚本:石井裕也

原案:猪瀬直樹

キャスト:池松壮亮、仲野太賀、佐藤浩市 他

配給:東京テアトル

あらすじ

1941(昭和16)年4月、真珠湾攻撃の8カ月前。官僚・軍・民間から選りすぐられた若きエリートたちが、内閣総理大臣の直轄機関「総力戦研究所」に招集された。彼らに与えられた任務は、“模擬内閣”を結成して日米が開戦した場合の戦局をシミュレーションし、その結果を内閣に報告すること。宇治田を始めとするメンバーたちは、国家機密レベルのデータを駆使した激烈な議論の末、「日本必敗」という衝撃的な結論にたどり着く。しかしエリートたちが導き出した敗北の予測は、時代が放つ得体の知れない空気にのみこまれていく(映画.comより)

上映時間:138分

開戦前夜 ネタバレなし感想

1941年の日米戦争が始まる前に

その結果をシミュレーションし、日本の敗北を予想していた若者たちがいた

まず私はこの事実を知りませんでした

敗けることが分かっていたのに、日本は戦争を始めた

なぜか

 

特に印象に残ったのは、研究所でさまざまな資料を提示しながら議論を続ける中

主人公の宇治田が感情を抑えきれなくなる場面

ここにはたくさん数字が並んでいるけど

1番大事な数字が書かれていない

また、開戦当時の総理大臣、東条英機の描かれ方も興味深くて

私の中では強権的な軍国主義者のイメージしかありませんでしたが

本作では多くの人と同様に、部下からの評価や世間の目を気にする

迷いや弱さを抱えた1人の人間としての側面も描かれていました

この東条英機のパートがあることで

戦争というものが、単に誰か1人の悪人が起こしたものではないことを感じさせられます

 

自分たちの国や家族を想い、必死で答えを導き出した人たちがいる

それでも、それぞれの想いや判断とは別のところで

さまざまな要因が絡み合い、大きな流れが生まれてしまう

誰か1人を悪者にして終わらせるのではなく、

「なぜ戦争は起こったのか」「どうすれば避けることができたのか」

観終わった後にしっかり考えさせられる作品でした

 

題材の面白さ、興味深さというよりは

この物語の中に伝えるべきことがあるからこそ、この映画は作られたのだと感じます

「こういうことがあった」「これだけの人が苦しんだ」という事実から目を背けず

単純に「戦争はダメ」という当たり前の結論だけで終わらせない

そこに至るまでの人間の弱さや社会の複雑さ、さまざまな思惑について考えさせられる作品でした

特にこんな方におすすめ!

  • 日本の歴史に興味がある!
  • 観終わったあとに、いろいろと考えさせられる作品が好き!              
  • 実話をもとにした作品が好き!
  • 社会や時代のことを考えるのが好き!

※以下、ネタバレあり

 

当事者不在の意思決定

この映画を観て、一番悲しいというか情けないというか腹が立ったのは

立場の弱い人が勇気をもって上の人間に進言しても

上の人間は面倒なことに巻き込まれたくなかったり、責任から逃れたいがために

自分では何もしようとしないこと

海軍のお偉いさんが近衛内閣の企画院総裁に「あなたから陛下に(?)戦争はできないことを言ってほしい」と頼みにいったのに

半笑いで「自分で言えばいいじゃん」みたいに言われるシーンがあって

「ああ、こういうことか」って

誰も責任を取ろうとしない

近衛文麿も敗けると分かっているから戦争はしたくなくて

総辞職というかたちで逃げてしまった

確かに宇治田たちにはそこまでの責任はないはずで

戦争をやめていたとして、世間の批判を浴びるのは宇治田たちではない

東条英機は東京裁判では自己弁護ではなく、国と天皇を守る発言に終始したと言われているけど

もし映画で描かれている東条英機の描写が正しいなら

なんでその勇気を、その覚悟をあの時に持ってくれなかったんだろうと思う

もちろん戦争を強行したのは、世間の目を気にしただけではなかっただろうけど

 

このレビューを書く上で、東条英機や近衛文麿について少し調べてみたりして

この映画の中で起こったことがもちろん全てではないし、簡単な話ではないから

考えをまとめようとしても、知らないことが多すぎて難しいけど

あれだけの人が犠牲になるということを、「亡くなり、悲しみ、苦しむ」ということを

上の方の人たちは、実際に犠牲を出した後も含め

どこまで実感を持って考えていたんだろう

それこそ、資料の上の数字ではなく

自分と同じ人間として

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